KazuがこのCourseを選んだ理由のひとつが,体系的な雪崩(Avalanche)に関する知識とそれを予測し避けるための実践を学ぶことにありました。期待していたとおりの大変有意義な機会となりました。記録を残すことも含めてまとめてみようと思います。
Avalanche Triangle
雪崩に巻き込まれるのは事故“Accident”ではありません。雪崩が起きる原因として以下の3つの要因が重なっています。これをAvalanche Triangleといいます。
Terrain(地形),Weather(天候),そしてSnowpack(積雪)です。そして,真ん中にスキーヤーの絵がありますが,これがHuman Factorを表しています。雪崩事故の90%は犠牲者または犠牲者の仲間や他のスキーヤーが原因となっているのです。順番にTriangleの説明を少し。
1)Terrain(地形)
3つの要素の中で,唯一私たちがコントロールできるものです。傾斜やアンカー(岩や樹木など)の有無が判断の要素となります。
インストラクターのAJも,Terrain is the only thing we have control over! と強調していました。
斜度:96%の雪崩が30度以上の斜面で起きています。特に35度〜40度,38度が一番危険な角度とされています。逆に50度以上の斜面では可能性がかなり低くなります(急すぎますよね)。
アンカー:森林地帯や尾根などは雪崩が起きにくい地形です。
2)Snowpack(積雪)
これについては,Snow pitを掘って雪の観察をするなど(後ほど紹介します)の方法がありますが,AJが強調していたのは積雪の多寡に関わらず,Shallow snow is weak snow−雪面近くの雪は不安定な弱い雪質,とのことでした。
3)Weather(天候)
AJが強調していたのは,Rapid change makes snow instability−急激な天候の変化(気温の上昇,積雪,降雨,強風による雪の堆積)は積雪を不安定にするということです。
4)Human factor(人的要因)
AJはこう言っていました。
Human is NOT rational beings, they are EMOTIONAL.
人は論理的な存在ではなく,感情によって左右される。雪崩の可能性があっても,その斜面を滑りたいがために陥る考え方や行動を,それぞれの頭文字をとってF・A・C・E・T・Sというと紹介してくれました。
Familiarity:「この斜面は前にも滑ったことがあるから大丈夫」
Acceptance:「おれはスキーが上手いから万が一雪崩が起きても避けることができる」
Commitment:「せっかく休みを取って来たんだ。Back Countryを滑れるのは今シーズンこの2日しかない」
Expert Halo:「あの人は経験者,あの人についていけば大丈夫」
Tracks:「あんなところに他の人が滑った跡がある。あそこなら大丈夫」
Social Pride:「あいつが滑ったなら,おれも・・・」
うーん,とっても説得力があります。
Avalancheのことをつきつめていくと科学の領域になりますが,少なくとも以下に挙げる要因のうち3つが当てはまる場合にはその斜面を滑ったり,横切ったりすることを避けるべきだそうです。これもそれぞれの頭文字をとってALP TRUTHと紹介してくれました。
Avalanche(雪崩)
48時間以内にその場所で雪崩が起きた
Loading(堆積)
48時間以内にその場所に積雪,風による堆積,雨が降った
Path(走路)
明らかに雪崩の起きそうな走路にいる
Terrain Trap(地形の罠)
ガリー(岸壁に食い込む急な岩溝),樹林,崖,クレバスや他の障害物の存在
Rating(格付け)
アメリカのスキー場やメジャーなエリアでは,雪崩の危険性を格付けした公的な雪崩情報があります。危険度の低い順から,1.Low 2.Moderate 3.Considerable 4.High 5.Extreme となっています。これが,3.Considerableまたはそれ以上の場合
Unstable Snow Signs(不安定な雪のサイン)
崩れやすい,クラックが入る,中空構造の雪などの明らかな証拠
Thaw Instability(融解による不安定)
太陽,雨,気温の上昇などで雪面が急に温められること
さらに,ビーコン,スノースコップ,プローブをといったレスキューギアを携帯し,少なくとも2名以上で行動すること,雪崩の危険性がある斜面を横切るときは必ず1人ずつ行動すること,グループで判断すること,などを実践することにより,雪崩事故のほとんどを防ぐことができるとのことです。
なお,ここで紹介していることはAvalanche Awarenessに関するほんの一部なので,詳しくは雪崩の講習会に参加したり,雪崩に関する本を読むなど,最新の情報とTechniqueを学ぶことが大切です!!!
では,Fieldで行ったことを写真を交えて紹介します。
まずは2人1組で片方がビーコンをどこかに埋め,残りがビーコンを探索モードにしてビーコンを探す練習。モデルはElie from Oregon。
見っけたど〜!
AJとCraigによるレスキューのデモ。ビーコンの入ったバックパックをビーコンで探索し,プローブで埋まっている場所を特定し,スコップで掘り出します。1mほどの深さのバックパックを探索し掘り出すまで2分30秒!はやい!!
Snow Pitを掘って積雪の観察。スラブ(雪の層)とその間にある弱層をチェックしています。それぞれのスラブの固さも計ります。
それぞれのスラブの雪をスコープで観察,さらに雪温も計ります。
観察した結果を記録します。
雪面の安定性を測るテストのひとつ,コンプレッション・テストを行っています。
モデルはMarty from Englamd。
このような感じでLectureとFieldでのPracticeの両面で雪崩についての理解をさらに深めることができました。
繰り返しますが,ここに書いてあることは,Avalanche Awarenessのほんの一部なので,講習会に参加して実際に学ぶことを強くお奨めします。
たとえば・・・日本雪崩ネットワークなど
Good News:ほとんどの雪崩は避けることができる
Bad News:そのためには雪崩に関する正しい知識とそれを避けるための行動をとることが必要である。
Have a good SKIING !
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