今回は自閉症のある子どもたちがキャンプのプログラムにスムーズに参加できるようにするための工夫を紹介していきます。
時間の見通しを持つことが、曖昧なことを受け入れることが難しく、コミュニケーションの取り方に特性があるキャンパーのために有効なのがStructuring=構造化です。TEACCHと関係が深いASNCらしくどのプログラムに関してもしっかり構造化されています。
1.Physical Organization=物理的な組織化
境界が曖昧だったり、何をする場所なのかわからない、などによる混乱を避けるために、場所をはっきり分けています。
これは、Arts & Craftsの様子を上から撮ったものです。キャンパーの特性に応じて、個人の机や大机などで個人のスペースを確保しています。
ハイキングをしています。
コースのところどころに遊具があり、キャンパーへの目印となっています。
キャンプファイアーの様子ですが、まわりに置いてあるベンチが境界=Boundaryとなります
これはThunder Scheduleでプログラムが変更になったときのことです。Gymの一角に絵を描いたり、本を読んだりするコーナーを作りました。ポイントは左の仕切り、移動式のベンチを置いただけですが、これだけでもPhysical Organizationの効果があるそうです。
ポイントは3つ
1)目で見てわかる仕切りや境界を用意する
2)キャンパーが集中できるように視覚的・聴覚的な刺激を最小限にする
3)何をする場所かはっきりさせる
2.Daily Schedule=スケジュール
時間の見通しを持つことが難しいキャンパーのためにさまざまな形式のスケジュールが用意されています。
これは1日を見通した文字によるスケジュール、活動が終わるたびに左にチェックをします。
これは終わったプログラムにマーカーで線を引き、次のスケジュールを確認しているところです。
これは絵によるスケジュール、終わるとカードがはがせるようになっています。
これは写真によるスケジュール、長い時間の見通しを立てるのが難しいキャンパーには次のプログラムが何なのかを示してあげます。
他にも食事の時にはフォークを見せる、Arts & Craftsの時にはクレヨンを見せるなどのObject Scheduleもあります。
Daily Scheduleで大切なことは、キャンパー1人1人にとって一番わかりやすいスケジュールを選ぶこと、Individualizeだそうです。
3.Work Systems=ワークシステム
ワークシステムはそのプログラムの中で、1)何を、2)どれくらい、3)どうしたら終わりで、4)次に何をするか、を視覚的に示したものです。
Arts & Craftsを例にしてみると・・・
30分の時間の中で3つの作品を作ります。それぞれの材料がボックスの中に入っています。
これが作品を作る順番を示したもの、もちろんAから始めます。
Aのカードを台紙からはがしてAのボックスに張り、作業を始めます。
実際の場面はこんな感じです。
中には全ての材料と文房具、作り方を書いた手順書が入っています。手順を見ながら、キャンパーによってはカウンセラーと一緒に作品を作ります。
できあがった作品はキャンパーの名前が貼ってある棚に持って行きます。全ての作品はキャンプの成果として持ち帰ることができます。
そして次の作品へ・・・一つ一つの作品にかかる時間は5分程度です。
全ての作品を作ったらChoice Time、パズルやゲーム、ブロックなどキャンパーの好きな活動を選べる時間です。
棚にはたくさんのパズルやゲームが用意してあります。キャンパーはここから自分の好きなものを選び、楽しむことができます。
これは前回も紹介しましたが、Shady CIrcleで行う歌やゲームのカード、歌やゲームが終わるたびにカードが外されます。
毎日夕食後に行われるSpecial Event(SE)でもさまざまな工夫がされています。SEは、サーカス・ナイト、極地探検、ジュラシック・パークなどさまざまなテーマで、アトラクション
が準備されています。
まずはリレーゲーム等の全体での活動を行った後、各ステーションに分かれてアトラクションを楽しみます。
各ステーションは色分けがされていて
各ステーションには何をするかが書かれています。
キャンパーはこのような台紙を持ち
参加するアトラクションに同じ色のカードを張ってから参加します。全てのカードが台紙からなくなったら活動が終わりということになります。
これはわかりやすい!と思いました。
4.Visual Structure
キャンパーにとって視覚的にわかりやすいようなさまざまなインストラクションやプロンプトが工夫されています。
このマーカーがあることによって
広い体育館の中で、キャンパーにとっては、ここに円になって集まるという印になります。
この3週間で、ぼくはキャンパーの気持ちがよくわかったような気がしました。英語での細かいコミュニケーションにはやはり難があるKazuにとっては、DirectionやCounselorのためのスケジュールがすごく役立ちます。それにしても次に何を準備する、などの細かい作業のコミュニケーションは英語で行われるわけで、ときどきついていくのが大変なときもあります。次に何をやるべきか見通しがつけにくい中で「あ、彼らはこういう気持ちなのかもしれない」と。
いよいよキャンプもあと2週。来週はAdult Week、Saraは「Old Friendsたちと会えるのがすごく楽しみだ」と言っていました。彼らの中にはSaraより長くキャンプに参加している人もいるそうです。
我がOld Friendsは今年もキャンプを楽しんでくれるのかなあ・・・と、日本を懐かしく思いました。